バトン。
新人の頃、
職場の先輩から受け取った優しさを、大抵すぐには気付けなかった。
アタシの失敗を、「小声」でそっと教えてくれたり。
アタシのどうでもよいプライドを守るために、自分の過去の失敗談を披露してくれたり。
飲み会の席次を、危険人物から遠ざけてくれたり。
安月給のアタシに、「多めに買っちゃったから」と食物を分けてくれたり。
その場にいる時は、余裕の無さや、申し訳なさで一杯で、
大事なことに全く気付けなかったのだけれど。
少し時間が経つと、遅れて届く通知みたいに、突然、気付きがやってくる。
「あれって、先輩の優しさだったんだな」と、ふと胸の奥が温かくなった。
きっと、先輩は、「普通にやっているだけ」と思っていたに違いない。
わざわざ恩に着せないし、「感謝して」とも言わなかった。
ただ、アタシが崩れないように、ほんの数ミリ負荷を自分側にずらしてくれていたんだ。
その見えない数ミリの積み重ねが、アタシの心許(こころもと)ない新人時代を、何とか今日まで運んでくれたのだと思う。
だから、アタシは、仕事が少しだけ分かってきた今、
真似できるところは、真似てみる。
あの時、救われたアタシを思い出しながら、
同じように誰かの1日を、少しだけ軽くする側に回りたい。
先輩から受け取った優しさは、決して「過去の思い出」ではなく、
今もアタシの仕事の中で、静かに形を変えて生きているよ。
そして、この優しさのバトンを受け取ってくれた人は、
いつか「その人」なりのやり方で、
誰かにそっと渡してくれますように。

本日のまこメシ。
少し上等な日本酒で。
父の日。
【4分の3はアタシが呑んだけどなの実家の晩酌のまこメシ。】
・鰻の蒸し焼き
・しじみの味噌汁
・レモンペッパーチキン
・山芋と大葉の麵つゆわさび漬け
・スイカ
・日本酒

優しさはいつも、説明書をつけてくれない。
ラベルも貼られないまま、日常と同じ温度で差し出される。
目に見えない優しさを、探せないでいたアタシは、
今度こそ、見逃さないでいたいんだ。
誰かの小さな親切が、アタシの通り過ぎた場所で、静かに光っている。
その光に、ちゃんと振り向ける自分でありたい。
そっと誰かを救っているその連鎖の端っこに、
アタシも何気ない顔で並べるように。

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