ふるさと。
東京・本所(ほんじょ)で生まれ育った三代目のあの人は、
生粋の「江戸っ子」で。
帰省の時期になると、必ず、アタシにこう云うんだ。
「田舎があっていいね。羨ましい」と。
田舎=故郷(ふるさと)の意味だって、分かっているし。
「ふるさと」が欲しい、そう願う都会人の気持ちは理解できるのだが。
馬鹿を云っちゃあ、いけねぇ。
こちとら、生粋の田舎っぺ。
何でも揃うこの街(東京)で、
生まれ育ったあの人には、分かるまい。
駅まで、徒歩1時間。
昼は蝉(せみ)が大合唱。
夜はカエルが大合唱。
親戚は、口を揃えて、「嫁にいかぬ」と大合唱。
帰省するたびに、「金」も「気」も大いに使うんだ。
ただ、田舎気分を味わいたいだけなら、旅に出ろ。
外から眺める故郷(東京)が、すぐに恋しくなるぞ。
隣の芝生は、いつだって、青く見えるんだ。
自分の芝生に水をやって欲しいんだ。
本日のまこメシ。
お盆で帰省。
父さん、ただいま。
一緒に晩酌しよう。
【田舎の家には必ずある『アジシオ』と共に実家での晩酌のまこメシ。】
・エビチリ
・焼き魚(ホッケ)
・小松菜のお浸し
・ビール
・スイカ
それでも、
こうして、田舎(故郷)に帰ってくると、
あの人の言葉も、
まんざらではないと気づくんだ。
田んぼのあぜ道も。
蝉の声も。
夏の風も。
親戚たちの明るい笑い声も。
あの人にはない、田舎だけの宝物。
「田舎がいい」とは思っちゃいねぇ。
だけど、帰る場所があるのは、いいもんだ。
そうだね。
あの人にも、お土産を買っていこうかな。
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