命売ります。三千万

なんでもない日常
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命売ります。三千万


もう、ずいぶん前の話だが。
アタシには、今でも忘れ得ぬ光景がある。


休日の銀座通り。
昼下がりの歩行者天国は、華やかな色と笑顔で溢れ返っていた。


その中を一人。
60歳前後とおぼしき男が、プラカードを高々と掲げ歩いていた。


プラカードには、「命売ります。三千万」と書かれている。


毒気の混じる派手なスカーフの女たちが、怪訝な顔をして振り返り、すぐに足早に通り過ぎて行った。
男に声をかける人は、誰もいない。




男には、表情がない。
ただ、機械のように、繰り返し、同じ通りを練り歩いているだけだ。


灰色(グレー)のコート。
白黒が混じり合う灰色の髪。
そして、瞳も灰色だ。


男の瞳には、銀座の美しい街並みも、空も、風も映らない。
ただ、足元の無機質な道路の色だけが、映し出されていた。




「命売ります。三千万」

男は、ゆらゆらと揺れながら、プラカードを掲げ、歩き続ける。

街は赤く染まり、青に浸る。

男は騒(ざわ)めく街の色に呑み込まれ、

やがて、小さな染(し)みとなった。


本日のまこメシ。


もしも。
もしもね。

こんな時に、自分が優しく話を聞いてあげられて、
内容次第じゃ、ほれ~、と三千万出してあげられる人間だったらいいのにな、
と夢を見ちまうものなのよ。(呆)


だけど、やっぱ、そんなヒーローにはなれなくて。
「ムリ確定」なのが、情けない。


何だか、懺悔したい気分。


普段なら、お肉も野菜もごろごろ入ったボリュームたっぷりのカレーにするのだが。
今日のカレーは、挽肉にしよう。(懺)


【贅沢禁止の気分のまこメシ。】
・キノコと挽肉のカレー
・福神漬け
・冷やしトマト
・梨



懺悔のつもりで、やっすいキノコと挽肉を選択したつもりだったが。
皮肉にも、これが、うんまい!
キノコの出汁がよく出ていて、挽肉の食感も最高だったぞ。



安い食材だって、人生に失敗したって、誰かに頼ったって、
良い道に繋がることはあるはずだ。



プラカードを掲げていたあの人も。

きっと。
きっと。

人生の彩(いろどり)を取り戻したと、信じたい。

今は幸せであると、信じたい。

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