第75柱 『それ、ロマンス詐欺やで』

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謎のアメリカ人。


アキさん(仮名)は、同じ職場の派遣社員さん。
40代独身、とっても仕事の出来る女性である。


そんなアキさんとランチをしていたら。
度々、アキさんのスマホにメッセージが入る。
なに、なに? もしかして、彼氏さん?


「うん。そうなの」

頬をほんのり染め上げて頷くアキさん。

「彼、アメリカ人で、今は米国にいるの。軍人で、前は日本にも駐在してたみたい」

どこで知り合ったの?

「秘密」

悪戯っぽく微笑むアキさん。

「今は、ちょっと問題があって会えないけど、彼が日本に来るための渡航費も一緒に貯めているの」

ん?

「彼のご家族が事故にあってね。お金が必要だし」

んん??

「でも、いつか会えると信じている」



それ、ロマンス詐欺やで。


あのー。
まさかとは思うけど。
アキさん、それ、最近よく聞く国際的な「あれ」に似てない?


「違うよ~」

笑って否定するアキさん。


そうだよね。
ごめん、ごめん。


「ほら、見て。彼、もう1年以上も、毎日、連絡くれるの」

スマホを差し出し、メッセージを見せてくれるアキさん。


「Honey.」
「I love you.」
「I can’t live without you.」


そんな中。
チラと見える「$1000」や「money」の文字。


「二人の未来のために、送ってるの」


アキさん、それ、やっぱ、ロマ……。


「チゲーよ!」




恋は盲目。


暫くして、契約を満了し職場を去ったアキさんから、突然、電話がかかって来た。


「ねぇ? 絵を買ってくれない? 彼が描いた絵なの。すっごく素敵なの」

電話に出るなり、まくし立ててくるアキさん。

「絵が売れたら、そのお金で、日本に来るって云っているの」


ごめんね。彼の絵は買えないよ。


「彼の絵を侮辱するなんて許せない! もういい!」

アキさんは激しく云い殴り、回線も心もプツンと切れた。




恋は盲目。
でも、そんなの当たり前だ。


恋が悪いわけでも、アキさんが悪いわけでもない。
悪いのは、アキさんの純粋で無防備な心につけ込んでくる、その男なのだ。
(男なのかも、わからないが。)



もう。
遠慮せず。

声を大にして云わせて貰おう。

「アキさん、気ぃつけ。それ、国際ロマンス詐欺やでー!」


つづく
(けど、アキさんの話はつづかない)

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