第9柱 私の母さん神様『母の死』

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母の死


母が死んだ。
とても暑い夏の日のことだった。





滑落死(かつらくし)。


こんな事が、家族の身に起こるなんて、予想だにしなかった。
もう何年も前のことなのに、今でも心が震え、受け入れることが出来ないでいる。




その日、父と母は、初心者向けのハイキング・ツアーに参加していた。
大勢のシニア達も参加していて、気軽に楽しめる里山歩きのはずだった。

それなのに。
母が、母だけが。
足を滑らせ、こおろころと崖へ向かって転がり落ちたのだ。


傾斜のある場所で、体重50kgの人間が転がり落ちると、10秒もすると時速40キロを超えるらしい。
速度は上がり続け、僅かな起伏でも跳ね飛ばされ、繰り返し、山肌に叩きつけられるのだ。


母は、100m下まで転がり続け、岩で頭を強打した。
病院のベットに横たわる母の腕や足は、激しい衝撃に耐えきれなかったのか、あらぬ方向を向いていた。



「いってらっしゃい。気を付けてね」と笑顔で送り出してくれた母は、もういない。

永久に、あの笑顔には、出会えないのだ。


葬儀の後に…


母の急逝後、時間は荒波の如く過ぎ去って行った。
深い悲しみの中でも、葬儀の手続きや、やらなければならない届出は、膨大だ。


目の前で母を失った父は、もう真っすぐに立つことすら出来ないでいた。
瞳の中には深い闇と空虚を湛え、放っておいたら、すぐに母の後を追ってしまいそうだ。


姉は、結婚して、既に実家を出ている。
アタシが、しっかりするしかない。


泣く暇も、考える余裕もなかった。
使命感と喪失感でごちゃ混ぜな心を奮い立たせ、黙々と必要な手続きを進めた。


手続き以外は、食べることも、寝ることも、生きることさえも「重要」でなくなった。
何も感じないのだ。


葬儀の日、見かねた親戚の叔母さんが、
「お願いだから、少しでも食べて」と、
アタシの口におにぎりをねじ込んできた。
叔母さんも泣いていた。


生ぬるいお茶を、喉に流し込みながら、なんとか米粒を呑み込んだ。
母が死んでから、初めて、涙が出た。
いったん溢れ出た涙は、もう止まらない。
おにぎりを頬張りながら、声を、魂を押し殺して、泣き続けた。




そして、何とか母の葬儀を無事に終えた夜から、次々と不思議な事が起こり始めた。

母が、そばにいる???

つづく

コメント

  1. きょん より:

    辛かったね。