第37柱 私の母さん神様『大切なこと』

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結婚と大恋愛。


恋、恋、恋。
血走った眼で、辺りを見回す。
ふー。無理だ。
どこにも「恋」なんて転がっていない。
このままでは、「恋」が「呪い」に変わりそうだ。


ここ数日、「恋」について考えていた。
友人・桃子から出された宿題により(理想の恋人の条件:第36柱参照)、自分の内面と真摯に向き合えたようだ。


結論。
今は、好きな人はいない。
ならば、自分の心が動くまでは、無理に恋をしなくていいんじゃないかしら?



「まこは、目の前に『100人』素敵な人がいても、自分が気に入る『1人』が見つからなきゃ、絶対好きにならないよ」

美容師をしている友人・アユ(仮名)が、鏡越しのまこに向かい、笑顔で告げる。
彼女は桃子同様、高校時代からの友人で、歌手の浜崎あゆみさんに似たキュートな女性である。
(なので、このブログでは、彼女のことをアユと呼ばせていただく)
明るく面倒見が良く、聞き上手 且つ 話上手のスーパー・レディ。
まこが飛びきり信頼している友人の一人だ。


「ま、アタシなら、目の前に『2人』異性がいれば、必ずどっちかを選ぶけどね」


そうね。
アユなら、2人いようが、100人いようが、「必ず1人を選びとる」よね。


ふっと微笑んだ後、急に真剣な表情になるアユ。
前髪を摘みあげ、数ミリ単位で切り揃えてゆく。
いいな、こういう職人の表情。
綺麗で、尊くて、うん、惚れ惚れする



「それに」

見惚れていたら、アユがいきなり核心を突いてきた。


「マコは『結婚』じゃなくて、『大恋愛』がしたいだけだものね」


あいたたたー。
さすが、アユの千里眼。
お見通しである。


そう。自分には昔から結婚願望がない。
ゆるふわっと側にいてくれるパートナーがいれば、それでいいのである。

アユも、結婚・出産を大前提にしていないのであれば、焦って恋愛をする必要はないと云う。


でもね。
もう少し本音を云うと、そんな想いを全て覆し『この人と結婚しなければ!』と心が沸き立つような相手と出逢えることを望んでいるのかもしれない。
そう、そんな大恋愛がしたいんだ。


大切なこと。


結婚願望はないけれど。

一つだけ、気になっている言葉がある。


母が亡くなってすぐ。
ある人から云われた棘のようなあの言葉。

「お母さん、アナタの花嫁姿を見られなかった事だけは、心残りでしょうねぇ」



その人に悪気がないのは分かっている。
そして、親のために結婚するわけではないのは、百も承知だ。


だけど。
心に刺さった言葉の棘は、抜けることなく、鼓動と共にいつも揺れている。


親不孝なのかな?
心配かけてるのかな?
やっぱり花嫁姿、見たかったのかな?



お母さん、ゴメンね。

望みを叶えてあげられなくてゴメンね。

ゴメンね。
ゴメンね。



ある晩、母さん神様が久しぶりに夢枕に立った。
まだ春には程遠い、寒い夜の事だ。


母は、腕一杯に、花を抱えている。
ふわふわ。ひらひら。
軽やかな足取り。
柔らかい光を放つドレスの裾が、ひらりんと舞い踊る。


「一番大切なことは……」


花束の一つをまこに差し出し、母は笑顔でこう続けた。


「マーちゃんが幸せになること」



ふわふわ。ひらひら。
花びらと一緒に舞い踊る。


「一番大切なことは、マーちゃんが、アナタらしく輝けること」




そうだね、お母さん。
一番大切なのは、自分が自分らしく幸せになること。
他人の言葉に惑わされることなく、自分はどうしたら一番幸せなのかを、きちんと自分の心と向き合って生きればいいのだ。



「お母さん、マーちゃんには、今までみたいに、ワクワクしながら生きて欲しいな」




「恋」ではないが。

「恋」みたいな温かいモノが、今、心の中に咲いたよ。

つづく

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