第40柱 私のもこり神様『終わりの美学』

スピリチュアル
※ アフィリエイト広告を利用しております
※ アフィリエイト広告を利用しています

終わりの美学。


「急で悪いな。退職金も出せないけど」

ガガさんが、無理に笑顔を作り、まこに告げた。


抗(あらが)う筈などない。
『わかりました』と静かに受け入れるだけだ。


結局、監督率いるこの映画制作会社は、収束へと舵を切った。
正確に云うと、会社の名前は残し、著作権所有物のみを監督のご家族が引き継ぐ。
が、それ以外の業務は、映画制作も含め、全て終了し、事務所も閉めるとのこと。
つまり、事実上の「解散」だ。


わかってる。
でも、実際に言葉で聞くと、結構な破壊力だな。
2年半という短い間だったけど。
慣れ親しんだ小さな幸せが、全部、全部、失くなっちゃうんだ。

もう一つのサヨナラ。


それからすぐ、まこはこの会社を去った。
ガガさんや経理の慶子さんは、残務処理があるので、少しの間、居残りだそうだ。

急遽、ガガさんが、まこの為に、ささやかながら送別会を開いてくれた。
が、そこにいた数人は、初めて会った、名前も顔も知らない現場の若いスタッフ達だった。
「無料(ただ)でご飯が食べられる」と何処かから聞きつけて、何となく集まってきたようだ。
だったら……。
ガガさんと二人だけの方が良かったのに。



終わりはいつもあっけない。
それは今回に限らず、何においてもそうだった。


夏から秋への移り変わりも。
お気に入りの家電の寿命も。
5年付き合った彼との別れも。
親友だと思っていた友人関係との終焉も。
そして、大切な人の命さえも。

終わりはいつも突然で、あっという間に全ての形を変えてしまうのだ。



もこり神様は云う。
「終わりが『悪』とは限らない。終わるからこそ、新しい『何か』が訪れるの」



そうね。
そうかもしれないけど。

やっぱり何かが終わるって、怖いよね。
明日が見通せないって、不安だよね。



「だからこそ楽しみなんじゃない」

もこり神様が楽しそうに笑う。



「オマエは、これから、何を選んでもいいのよ」

久しぶりの「オマエ」呼ばわり。
嫌いじゃないけど。(笑)



「自由なの」

もこり神様。
いつもより饒舌だ。



「それに」

姿は見えない筈なのに。
もこり神様の表情が、少しだけ真剣になるのを感じる。



「オマエの魂が、現状維持ではなく、前進することを望んでる」

射るような眼差し。
自分の内側に感じる、強く、優しい、もこり神様の瞳。



「だから、応援するわ」




ん?
なんだ? この感じ?

デジャブ?


しかも、自分の人生が大きく動くこの予感?








まさか……。









指導霊が、また、変わるの?





もしかして。







もこり神様も、消えちゃうのー?!

つづく

コメント