二代目・指導霊
私のもこり神様は、
初代・指導霊のおじさん神様からバトンを受け取った、二代目・指導霊である。
(指導霊については、第7柱 私のおじさん神様『守護霊』を参照)
もこり神様は、「好きな事を心ゆくまでおやりなさい」というタイプ。
自由をこよなく愛し、アタシの気持ちを一番に尊重してくれているようだ。
おじさん神様が「修行を好む仙人」とすると、もこり神様は「芸術を愛する弁天様」のようなお方である。
ナイスで素敵な指導霊なのだ。
やや、仙人も好きですぞ。
おじさん神様!
いざ、映画界へ!
そう。
そんなナイスなもこり神様が指導霊になった頃のことだ。
友人の紹介で、ひょんな事から「巨匠」と呼ばれる映画監督の個人事務所で、正社員として働くことになったのだ。
映画なんて、今まで全く興味がなかったのに……。
これも、芸術の神様・弁天様のようなもこり神様のお導きだろうか?
出勤1日目。
渡された手書きの地図を見ながら、都内某所の事務所へと向かう。
地図に記された場所に建物などない。
じっと目を凝らして見つめると、こんなところに?という壁面に、壁と一体化したような扉を発見。
ワクワクしながら重い扉を押し開き、螺旋階段を下る。
どうやら地下に、いくつか部屋があるようだ。
防音に向いているのであろう、「studio」の看板も見て取れた。
打ちっぱなしコンクリートの空間が、スタイリッシュでカッコいい!
さすが巨匠、何だか秘密基地みたいだぞ。
「おっはようございまーす!」
飛び切りの笑顔で入室。
が、返事はない。
『10時に来い』と言ったじゃないか。
誰かいないか、周辺をぐるりと見回す。
明かりはついているが、巨匠はおろか、人の気配はまるでない。
「すみませーん。どなたかいらっしゃいますかぁ?」
廊下を出た先の給湯室の方で、何かが小さく蠢(うごめ)くのが見えた。
人影?
誰かいるの?
いや、あれは……。
コバエだ。
しかも、大群!
ヤバイ。ヤバイ。ヤバイ。ヤバイ。
コバエに取り囲まれそうになり、両腕をぶんぶん振り回す。
ここは地下で窓がない。
アタシもパニックだが、突然の侵入者に、コバエさん達もパニくっているようだ。
それに、何やら臭う?
この地下全体から、饐(す)えたような臭いと酸っぱい臭いが混じり合い、悪臭を放っているのだ。
さっきまでは、あんなにお洒落に見えていた空間も、よく見ると、朽ちたコンクリートの壁が剥き出しなっているだけだ。
ここは、秘密基地?
隠家?
いや、廃墟だ。
つづく
コメント