探し物。
父が、家の中で、何かを探している。
その表情は暗く、固い。
聞いてみると、探しているのは銀行のキャッシュカード。
1週間前に使ったが、いつも保管している引き出しの中にないと云うのだ。
「あらら、それは困ったね。一緒に探すよ」と明るく云ってはみたものの。
実は、心の中では、アタシの方が焦っていたに違いない。
結局、キャッシュカードはすぐに見つかった。
いつも保管している引き出しの外に、滑り落ちていただけだった。
「悪いな」と父は寂しげに笑うけれど、
それがまた、アタシの心を締め付けた。
少しづつ、
増えてきたね。
忘れたり。
分からなかったり。
だけど、
たまに、
適格だったり。
理路整然としていたり。
だから、希望が胸に満ちたり。
だけど、すぐに、ココロが曇ったり。
「見つかって良かったね」と笑顔で父に声をかけながら。
ホントは少しだけ、泣きたかった。
あるはずのない答えを、
探し回りたい気分だった。

本日のまこメシ。
あ。
箸(はし)、忘れた。
【自分だって忘れるのだよの弁当のランチのまこメシ。】
・手作り弁当
・揚げ茄子の味噌汁

「もの忘れ」と「認知症」の違いは、
「体験したことの一部」を忘れているか、「体験したこと自体」を忘れるか。
例えば、「朝食を食べた」ことは覚えていても、「何を」食べたのかを忘れたのは「物忘れ」。
「朝食を食べたこと自体」を忘れる場合は「認知症」である。
今の父は、キャッシュカードを使って、どこにしまうべきかは覚えているけれど、
いつか、どこに置いたか分からなくなり、「キャッシュカードが盗まれた」と云うのだろうか。
忘れていくことを忘れるかもしれない父を、
忘れないようにと見つめるアタシ。
そんなアタシの記憶もまた、
アタシ自身、いつか忘れていくのかな。

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