第178柱 『雛人形が泣いている』

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ひな祭り。


春の訪れを感じても、まだ眠りの中。
光届かぬ箱の中で、静かな時を過ごしている。


埃(ほこり)を被(かぶ)り。
皆に忘れられて。
少し、淋しい。


かつては愛(め)でられ、大切に飾られた存在なのに。
今は、押し入れの奥で、自分の出番を待ち続けるだけの日々。


出して!
気付いて!
私はここにいるよ。


幼い女の子の成長を願うだけでなく、
家族皆の災厄を引き受ける役割があるというのに。





ねぇ、知ってる?
毎年春が来るたびに、 箱の隙間からそっと外を覗いているの。


アナタの笑顔が見たい。

ただ、それだけなのに。



本日のまこメシ。


雛人形を飾る年齢に。


上限はないらしい。


【お婆ちゃんになっても飾ってやるの本日のまこメシ。】
・卵と野菜のサンドイッチ
・苺
・ヨーグルト
・コーヒー




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「年に1回は箱から出してあげないと、雛人形が泣くのよ」

亡くなった母が、昔、よくそう云っていた。

当時は、その言葉を「怖い」と思っていたが。

今なら分かる。

家族と一緒に歴史を歩んできた人形には、きっと優しい魂が宿り、淋しくて「泣いちゃう」んだな。


残念ながら、アタシの実家では、七段飾りの古い雛人形は、既に処分してしまったけれど。

その後、アタシは、自分用に小さくて可愛いお内裏(だいり)様とお雛様のミニセットを買ったんだ。

そして、今年も、箱の中から取り出して、一緒に、春の訪れを感じている。






あれ? 今。


雛人形が微笑んだよ。


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