第73柱 『月はどっちに出ている?』

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月食。

2021年5月26日。
昨年の皆既月食の出来事である。


チロリと月食を見ようと、夕闇の中、一人、外へ出た。
東京の空は狭い。
月を探して、ふらふらと街を歩き回る。


月はどっちに出ているのだろうか?
下調べもせず、ふらりと出てきてしまった自分を呪う。


しかも、この日は全国的に天気は下り坂。
東京でも、本当に月食が見られるのかな?


高い建物を避けて歩いていたら、いつの間にか、谷中墓地へと辿りついた。
皆、似たようなことを考えているのか、家族連れなど、結構、人がいる。


夜のお墓だけど、これだけ人も一杯いるし。
うん、全く怖くない。


少しでも見晴らしの良い方へ。
少しづつ、少しづつ、墓地の奥へと歩を進めていった。



月はどっちに出ている?

待てど暮らせど、月は姿を現さない。
雲に隠れているのか?
それとも、見ている方向が違うのか?


一人、また、一人。
諦め顔で、人々が帰って行く。
少しだけ、心細くなる。



「月は見えますか?」

ふと気付くと、白髪の老人がアタシの隣に立っていて、優しく話しかけてきた。

「いやぁ、見えないですね。お恥ずかしい話、どこの方向かも、全くわかりません」


「いつもなら、あっちの方向に出てますけどね」

老人が、東の空高くを指さし、遠くを見つめた。

「うちから、よーく、見えるんですよ」


老人はスエットにサンダルといった軽装だ。
手には、スマホを大事そうに握りしめている。

「ご近所の方ですか?」

「はい、ここに住んでいますよ」

老人は、楽しそうに、うひゃひゃと笑った。



老人の指し示した方向には、厚い雲がかかり、月は全く見えない。
そうか。
近所の人が云うのであれば、間違いない。
残念だが、今宵は、月食は見られそうにない。



「残念だけど、月が見えないので、アタシ、帰りますね」

そう云って隣を見ると、老人は霧のように消えていた。


あれ?
もしかして、ここ(谷中墓地)の住人?


見たい。絶対、見たい。


明日、11月8日(火)は「皆既月食」だ。
月が地球の影に完全に隠れて、赤銅色の満月が見られるらしい。


次回、日本で皆既月食が見られるのは2025年9月8日で、約3年後となる。
そんなに待てない。
だから、今回、見たい。
絶対、見たい。
人はいつ死ぬか、分からないし。


しかし。
あの老人は、谷中墓地の住人だったのだろうか?


だとしたら。
現代のお化けは、スマホを持っているんだな。(笑)


つづく

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