第50柱 私のあねご神様 『あしながおじさんの女房』

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あしながおじさん。

以前、会社に、どんな女性にも分け隔てなく優しく接するオジ様がいた。


ちょっと怖いお局様の女性にも。
失敗ばかりの新人の女性にも。
元気一杯のヤクルト・レディにも。


勿論、まこにも食事をご馳走してくれたり。
誕生日には、花束やお菓子をプレゼントしてくれたり。

全女性に対して、なんともマメで優しいオジ様なのである。




このオジ様。
60代男性で、背も高く、見た目もシャープ。
性格も話し方も優しく、声を荒げているのを見たことがない。
いつもスリーピースのスーツを着こなし、噂ではかなりの資産家のようだ。


イメージだけど、彼のことを、こう呼んでもいいかな?
孤児院で育った身寄りのない少女に、進学のための援助を行なう、例のあれ。

あしながおじさん」

(なので、このブログでは、彼の事を「あしながさん」と呼ぶことにする)
女性陣みんなに「施(ほどこ)し」を与える、ナイスな人なのである。

あしながおじさんの女房。


あしながさんは、お酒が大好きだ。
毎晩のように、誰かとお酒をたしなみ、その後、上機嫌で自宅へと帰る。
同席するのが女性だけだと、気前よく、全ての支払いをしてくれる事も多い。

今宵も、仕事終了後、まこを含む女性3名と一緒に、肴の旨い店へと繰り出した。
あしながさーん、ご馳走になりまーす!



ところで。
あしながさんの奥様は、毎晩、寂しくないのですか?


「孫と息子夫婦も同居なのでね。お爺さんは居ない方が楽みたいだよ」

フフと笑い、豪快に酒の肴を「一気に」口に放り込むあしながさん。


あー、もったいない。
高価な「うにと貝の贅沢和え」だ。
自分なら、ちょびちょびちょびと小分けにして食べてしまう。

あしながさん。
つまみの食べ方も、超一流である。





さて。
今宵も楽しい時間を皆で過ごし。
支払いの段になり。

いつも出して貰うのは悪いので、今日は、女性陣で払いますよ~。


「いやいや。女房から『お嬢さん方に支払いさせちゃダメよ』と云われてるんだよ。ほら。カードも渡されてるし」

見たこともないような光輝くクレジット・カードを取り出すあしながさん。


いっつも、すみませーん。(合掌)

極上の笑顔の女性3名。
いや、卑しい笑顔かもしれないな。

しっかし。
あしながさんの奥様、相当、出来た女性ですね。



支払いで席を外したあしながさんを横目に、花子先輩がぴしゃりと告げた。
(花子先輩については、第43柱 私のあねご神様『一匹狼』を参照)


「奥様、さすがね」

ニヤリと嗤う花子先輩。


「カードで支払わせれば、いつ、どこで、何名で、いくら使ったか、詳細を管理できるものね。レシートは捨てちゃっても、カード会社から明細を貰えるし」


へ???


「奥様は、全て情報を握っているってこと。つまり、あしながさんは、完璧に、奥様の掌(てのひら)の上ってことよ」


なんかスゲー。
そんな事、考えたこともなかったよ。

素敵な男性の隣には、賢い女性がいるって事ね。







その時。

あねご神様が、まこの中で囁いた。






「従順で、賢くて、優しくて……」



「猛獣のようなプライドを持つ女房ね」

つづく

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