野蛮人、それは
年間365日、ガバチョを腰にぶら下げている、カメアシの亀くん(仮名)。
ある日、アタシに懇願してきた。
「スカートで、椅子の上に立ってくれ。そして、下から写真を撮らせてくれ」
ちなみに、ガバチョはガムテープ、カメアシはカメラマンのアシスタントの事である。
訝(いぶか)し気に「何故だ?」と問うと、亀くんは一言、こう言い放った。
「仕事だ。いや、生きる為だ!」
いや、亀くん。
世間では、それを「犯罪」と呼ぶのだよ。
「亀、やめとけ。そのコは堅気(かたぎ)の子だから」
横目で見ていたガガさんが、一刀両断してくれた。
ガガさん曰く、アタシは「業界人」でなく「普通の子」なのだ、と。
「堅気を、こっちの世界に引き込むなよ」
普通の子(アタシ)の目に映る業界人は、まるで野蛮人のようだ。
今まで一般企業で培ってきた「常識」は、全く通じないのである。
過酷な労働環境、理不尽なハラスメントのオンパレード。
家にも帰れない、お風呂にも入れない、ある時は「皮」まで喰らう日々。
そして、亀くんのように、映画を撮りたいが為に、生活費を稼ぐ手段として、すけべぇな写真まで撮らなければならないのだ。
しかし、その激しい日々の中で、野蛮人たちは「映画」という一つの世界に目を輝かせている。
凄まじいエネルギーで邁進しているのだ。
そして、ある時、多くの野蛮人たちが心を一つにして、作品を創り上げる。
そうして完成した作品が、人の心を大きく動かすこともあるのだ。
もこり神様は云う。
「『好き』を貫くのも才能だ」
面白い。
映画の世界。
そして、映画界の人々。
とんでもない世界だが、もっと知りたくなってきた。
この世界、味わい尽くしたい。
つづく
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