第57柱 となりのお不動様『凄い霊能者③』

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母の願い。

「今のところない」

お不動様が、シラと告げる。

「して欲しいことは、特にない、と云っている」



え? そんな。
お母さん!
私にして欲しいこと。
なにか、あるでしょ???




例えば……。


少し考え込んでから。
心の奥に引っかかっていたあの質問を。
思い切って、口に出してみた。




私が、母(の魂)を生んであげることは出来ますか?




生まれ変わり。
そんなの迷信だと、笑う人もいるかもしれないが。




もし、自分が母(の魂)をこの世に産み落としてあげることが出来るのならば。
母は、今度こそ、家や家族に縛られることなく。
好きなように生きられるかもしれない。
生まれ変わって、もう一度、人生をやり直して欲しいのだ。




「やめた方がいい」

お不動様が、突き放すように言い放つ。

「オマエの母は、そんなこと望んでいない」


お不動様は、まこ達には背を向け、前方高座に座っている。
怒っているのか、呆れているのか。
その表情は伺いしれない。


「魂にとっては、あちらの世界の方が幸せだ。なにも、この世に引き摺り戻すことはない」


この世なんて。
あちらの世界に比べれば、地獄みたいなものなのか?

「それに……」


今度は少しだけ温かみを帯びた言葉で、お不動様が告げた。

「オマエの母は、幸せだったと云っている」


生まれ変わり伝説。

お不動様曰く。

人の魂は、約300年に1度、生まれ変わるとのこと。
何度も生まれ変わった人もいるが、今生(こんじょう)で初めて生まれてきた人もいるらしい。


前世で深く関わった人は、今生でも関わる可能性が高く。
前世で父親だった人が、今生は息子に。
前世で愛した相手が、今生は良きライバルになることもあるようで。
そうやって関わり続け、互いの魂を高め合っていくらしい。


また、前世で刃傷沙汰(にんじょうざた)を起こした人は、今生では、逆に、刃物で切り付けられることもあるそうだ。
それは、手術、事故、事件など様々な形となって見舞われる。
自分(の魂)のした事は。
例え生まれ変わっても、責任を持たなければならないのである。



更に、お不動様が教えてくれた。

前世で死ぬ間際に、強く思った(願った)ことは。
そのまま今生に持ってきているそうだ。


例えば。
「また、この人と一緒にいたい」
「こんな貧乏はイヤだ」
などなど。
そして、それこそが、今生の「生きるテーマ」となることもあるそうだ。


ちなみに、お不動様に、まこの前世も視て貰ったが。
今生で、4回目の生まれ変わり。
3回目の死に際で思ったことは、「次は、自分の思い通りに生きたい」とのこと。

ふむ。
まさしく、今生の「生きるテーマ」と云われても、頷けるな。

今生、現世、この人生。
ただ、ひたすらに。
自分の思い通りに生きてみたい。





となりの里のお不動様から伝授された「生まれ変わり伝説」。
誰も、答え合わせの出来ない内容ではあるが。

信じるか信じないかは、アナタ次第である。

つづく

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