孤高の旅人 Ⅲ
クアラルンプール発祥の地で、史跡を巡る。
先人の心に触れる、貴重な時間だ。
まずは、国旗はためくMerdeka Square(ムルデカ・スクエア:独立広場)へ。
ムルデカはマレー語で、独立の意味。
1957年にイギリスからの独立を宣言、マレーシアの国旗が初めて掲げられたのが、ここムルデカ・スクエアだ。
イギリス統治時代の歴史的な建物に、勢いよくはためく国旗。
現在のマレーシアの目覚ましい経済発展を象徴しているようだ。
続いて、植民地時代の建築の代表格、スルタン・アブドゥル・サマドビル(旧連邦事務局)へ。
現在、最高裁判所として使用している由緒正しき建物なのだが、夜間はライトアップしちゃうのだから、面白い。
更に、KL最古のイスラム寺院マスジット・ジャメへ。
純白の玉ねぎ型ドームをした寺院なのだが、ヤシの木で囲まれ、まるで南国の王宮のような美しさだ。
見学の際には、女性はスカーフが必要。
スカーフの代わりに、ユニクロのパーカーのような上着を貸出してくれたが、メッチャ暑いので、ふんわりスカーフを持参すると役に立つ。
イスラムの世界は、実に神秘的で、興味深い。
1信教、1日5回の礼拝、断食、偶像崇拝禁止、豚肉の禁止等、厳しい戒律のある宗教である。
しかし、敬虔な信者が多いのも、又、事実。
厳しい制約があっても、なお、信じられるモノがあるという事は幸せなのだ。
帰り道、イスラムの世界観に浸りながら、1人、しんみりと駅の前で汗を拭いていた。
現地の女性が、迷いなくまっすぐ向かって来た。
一枚のチラシを受け取る。
宗教の勧誘か?
『ビフォアー&アフター。痩せたいアナタに個人レッスン』(チラシ)
マレーシアまで来て……。
ちょいちょい失礼な国である。
合流地
クアラルンプールとは、マレー語で「泥の川の合流地」の意味を持つ。
ゴンパック川とクラン川の合流点でスズ鉱石がみつかり、掘り出された鉱石を川の水で洗ったために泥流となったことから「クアラルンプール」と命名されたとのこと。
その合流点に建つのが、先ほど訪ねたKL最古のイスラム寺院、マスジット・ジャメである。
そして、ここクアラルンプールでは、川だけでなく、マレー、中国、インド系の他、少数民族の人々が、互いの文化を尊重し、交わり、共存している。
宗教に至っては、イスラム教、ヒンドゥー教、キリスト教、シーク教、仏教など様々。
複合民族国家として発展を遂げるマレーシアの原点は、尊重し合う心なのだ。
1人、異国の地をふらついていると、自分が何者でもないような気分になる時がある。
だけど、この国では1人であっても、独りじゃない。
ちっぽけな旅人を、受け入れてくれる。
皆、本当に優しいのだ。
今夜も一人、ジャラン・アローの屋台街へと向かう。
カレー風味のあさり炒め、ミーゴレン・バサ(あんかけ焼きそば)、そして、お馴染み・タイガービアーをオーダー。
どれも旨い! そして安い! (合計約1200円)
更に、店のオジさんから粋な計らい、つまみのピーナッツを頂いた。
つたない話を聞いてくれる姿勢が、又、嬉しい。
ホテルのスタッフ達とも、仲良くなり、案内される朝食のテーブル位置も、日を重ねる毎にグレードアップしていく。
初日は、暗い廊下しか見えない端のテーブル。
二日目は、店内の中央部へ。
三日目は、美しい景色の見える窓際へ。
ん? この分だと、明日は窓の外か?
つづく
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