第41柱 私のもこり神様『スタンバイ』

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スタンバイ。

事務所が事実上の解散となり、突然の無職となった。

当時32歳、独身。
彼氏なし。
貯金なし。
仕事なし。
うー。哀れの極みである。


子供の頃は、32歳って、もっとずっと「大人」だと思ってた。
多くの知識、多くの経験。
何でも出来て、色んなモノを手にしてて。
「与える方の立場の人」だと思ってた。


だけど、実際は、泣きたくなるほど、小さくて。
与えるどころか、求めるばかりの毎日だ。


このままでは、いけない。
本当の意味で、自分の「心」も「身体」も「生活」も、自分で自分を守れるようにならなければ。

しかし。
さーて、これから、どうしよう?
就職活動って、何から始めるのだっけ?



はて。
もこり神様は、『何を選ぶのも、オマエの自由」と云ってはくれたが。
(詳細は、第40柱:私のもこり神様『終わりの美学』参照)


あれから、もこり神様はその存在を現さない。
やっぱり、あれが、お別れだったのかな?



「オマエの魂が、現状維持ではなく、前進することを望んでる。だから、応援するわ」

もこり神様の言葉を思い出す。



よし。
今は、無職という名の「スタンバイ」だ。
絶対に、また、走り出してやる。


引き寄せの法則、again。

『引き寄せの法則』もあるの。こうだと決めてリストアップしておくと、結構、引き寄せるものよ」

これは、以前、恋愛マスターの桃子が、「恋」を引き寄せる為に伝授してくれた「勝利への法則」だ。


『引き寄せの法則』とは、叶えたい結果を具体的にイメージすることで、自然とそれに向け行動するようになり、理想の結果を引き寄せる事が出来る、という考えだ。
ポジティブな考えを抱けば、それを引き寄せるが、逆に、ネガティブな考えを抱けば、そちらを引き寄せてしまう。
強い想いこそが、現実を創り上げてゆくのである。



ならば。
この法則を「仕事」に転用してみてはどうだろう?
「恋」の引き寄せは、無為(むい)に終わったが。(恥)

引き寄せの法則、again(再び)。
桃子先生、今度こそ、頑張りまっす!


その為にも。
やりたい仕事。
なりたい自分。
欲しい生活。
叶えたい結果を具体的にイメージしてみる。

すると。
意外にも、自分の心の底に、ある事実が見えてくる。
給料などの待遇や条件面より、引っかかるモヤモヤ。
「映画の世界」への未練だ。


特に、映画が好きだった訳ではないのに。
キツくて、汚くて、薄給なのに。
「たまたま」縁があり、働き始めただけの映画制作会社だった筈なのに。


監督やガガさん達に出逢い。
映画を創る為に、全てを賭ける活動屋達に出逢い。

ヘンテコな世界。
とっ散らかった世界だけど。

好きになりかけていたのだ。
信じ始めていたのだ。

「たまたま」縁があったわけではない。
あそこで働いた事は「必然」で、きっと意味があったのだ。



映画の世界を、もっと知りたい。
2年半では、掴めなかったあの世界。
映画界の「すみっこ」でいいから、そこから映画の「中心」を暴いてやりたい。


決めた。

もう一度。
映画に関わる仕事をしたい。

いや。するんだ。



もこり神様が、静かに頷くのを感じた。

赤い唇が、さようなら、と小さく動いた。

つづく

コメント

  1. きょん より:

    やったぁ~!がんばれっ!と応援したくなりました。