夏の終わり。
夏が終わろうとしていた。
その時、アタシは、20代の終わりを迎えていた。
次々と結婚や出産を迎える友人たちの中で、一人、呑気に生きていた。
強がりに聞こえるかもしれないが、焦りはない。
が、少しづつ「自分の未来」が気になり始めるお年頃だ。
派遣社員やバイトでも、社会と十分に関わっていけたのだが。
楽しかった毎日にケリをつけ、新しい会社に正社員として転職をすることにした。
5年ほど付き合った彼とも、潔く、お別れした。
自分の未来に、彼の姿が想像出来なかったからだ。
危うさは残るが、何とか自分の足で立っていこうと心に決めた。
自分の人生、人任せにはしたくない。
「突然、何か視えちゃう、聞こえちゃう」という事は、まだ、度々あった。
が、今なら「スイッチの切り替え」とでも云うべきか。
フィルターのようなモノを1枚挟むことにより、視たくないモノは遮断できる気がする。
そして、昔と比べ、圧倒的に違うのは。
「みんなとは違う自分」が、それほど気にならなくなったことだ。
そんな頃。
「あの方」がうっすらと姿を見せたのである。
さよなら、おじさん神様。
何だろう?
女性のような気配がする。
と、同時に。
おじさん神様の気配が消えた。
「おーい。おじさん神様ぁー」
「……」
「ねぇねぇ。無視しないでくださーい」
「……」
何度声をかけても、返事がない。
おかしい。
いつもの、おじさん神様の「存在」自体を、全く感じないのだ。
ややっ! これは。
誰が教えてくれたわけでもないのに、「指導霊が交代した」と直感で悟る。
今度の指導霊は「おじさん」ではなく、紛れもなく麗しい「女性」。
それは、勿論、受け入れる。
というか、アタシに拒否権はない。
でもね。
じゃぁ、おじさん神様は、どこに行ったの?
まだ、「さよなら」も「ありがとう」も云ってない。
おじさん神様ぁぁぁぁぁーーーっ!!
おじさん神様は。
唐突に、アタシの中から消えてしまった。
更なるお話(第22柱)へと、つづく
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