第83柱 『百夢を超えて』

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卒業試験。


ある晩、ぐっすり寝ていると。
あねご神様(アタシの3代目指導霊)に、遠く遠く、連れ去られる。



「卒業試験だ」

「これからオマエに100の夢を与える




不思議な夢。


ここはどこだろう?
ヨーロッパのどこかだろうか。


朽ち果てた大きなドーム状の建物の中に、巨大な白い柱が数本見える。
イメージとしては、ローマのパンテオン神殿に近い。


場所どころか、時代もわからない。
そして。
アタシは誰なんだろう?
性別すら、分からない。


これは、夢の中なのだろうか?
それにしても、この臨場感、半端ない。
汗や風、匂いまで感じとれる。


すると、少し離れた柱の陰に、
一人の男が、じっと息を潜めているのが見えた。
兵士だ。


兵士の銃口は、アタシの隣にいる仲間を狙い定めている。
銃に込められた残りの弾は、あと1発。
不思議と、アタシは、それを知っていた。


アタシの手の中には、手榴弾が一つ。
このピンを引き抜いて、あの兵士に投げれば、平和が訪れるのだろうか?


この異質な夢の空間で。
武器は、二つ。
命は三つ。


どうしよう?
どうしよう?


アタシは、手榴弾は投げず、仲間にも渡さなかった。


そして、兵士とは反対の方向に向かい、一人、走った。
取り残された仲間が、遠くで何か叫んでいる。


兵士の銃口の狙いがアタシへと変わる。
背中に重い衝撃が走る。
熱い? 
痛い?
理解しがたいチカラに屈し、腰から砕けた。


地面に叩きつけられながら、
アタシは手の中の手榴弾のピンを引き抜き、抱え込む。






よし。

これで、アタシ以外、誰も死なない。



百夢を超えて。


それから、毎晩のように、不思議な夢を見続けた。
1夜1夢の時もあれば、複数の時もあった。


沈みそうな舟に乗り、向こう岸に向かう夢。
デザイナーになり、華やかなドレスを作っている夢。
恋人が伝染病で死に、自分は生き埋めにされる夢。
出雲に向かう神々の行列を見送る美しい稲穂の夢。


その全てが。
自分では経験したことのない内容の夢ばかり。


嬉しかったり、残酷だったり、切なかったり。
不思議な、不思議な、100の物語。







これが、あねご神様の云う「卒業試験」なのだろうか?


無理だ。
色んな感情が渋滞し過ぎて、心がもちそうにない。


正直、今夜は、どんな夢が訪れるのか、寝るのが怖かった。
だけど、「100の感情」から逃げることは出来ない、そう悟っていた。






そして。
ヘトヘトになりながらも、
とうとう、百夢を超えた頃、
あねご神様がゆるりとやって来て、こう告げた。





「おめでとう。卒業だ」


つづく

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