未遂。
一人、白い壁を見つめていた。
西向きのアタシのお部屋。
カーテンを閉め切りにすると、いつ日が昇り、いつ日が沈んだのか、
いつが今日の終わりなのか、全くわからない。
あれから、部屋で一人、ずっと考え込んでいる。
一方的に、怒鳴られ、罵倒され、叱責され、
もともと、ちっぽけなアタシの自尊心ですら、ボロボロだ。
哀しくて、悔しくて、不条理で。
外出もせず、食事もせず、眠る事もままならず。
ぐるぐるとマイナス思考が止まらない。
こうして、自室の白い壁を見つめていると、
普段は思いもしない考えが沸いてくる。
この白い壁に、
アタシの血で、
アク部長の名前を書いて、
呪ってやりたい。
笑いの神様。
白い壁に、アタシの鮮血で、
「呪・アク部長」と書き殴りたいのだけれど。
あれ?
「呪」という漢字は、どう書くのだっけ?
普段は、縁のない漢字だし。
いっつもパソコンを使っているから、
漢字は読めるけど、書けなくなっているようだ。
しつこく思い出そうとしても、
どうしても「祝」しか思い出せない。
祝・アク部長!!
呪いたいのに。
祝ってどうすんだよ。
ぷぷっ。
思わず、一人、笑ってしまった。
すると。
待ってましたとばかりに、笑いの神様が降りてきたようだ。
そして、有無を云わさず、
温かい両腕で、心をギュっと抱きしめてきた。
何だろう?
少し笑っただけなのに。
身体も心も、あったかい。
心に温度が戻ってくると。
ふと、我に返る。
アタシ……。
何をしているんだろう?
手首に押し当てようとしたナイフを投げ捨て、
そのまま、カーテンを開けるために立ち上がる。
柔らかい西日が、注がれる。
すると、唐突に、自分が強烈に空腹だということに気付かされる。
とにかく、何か、口にしよう。
どうやら。
笑いの神様が、アタシを助けてくれたようだ。
つづく
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