第81柱 『笑いの神様』

スピリチュアル
※ アフィリエイト広告を利用しております
※ アフィリエイト広告を利用しています

未遂。


一人、白い壁を見つめていた。


西向きのアタシのお部屋。
カーテンを閉め切りにすると、いつ日が昇り、いつ日が沈んだのか、
いつが今日の終わりなのか、全くわからない。


あれから、部屋で一人、ずっと考え込んでいる。
一方的に、怒鳴られ、罵倒され、叱責され、
もともと、ちっぽけなアタシの自尊心ですら、ボロボロだ。


哀しくて、悔しくて、不条理で。
外出もせず、食事もせず、眠る事もままならず。
ぐるぐるとマイナス思考が止まらない。


こうして、自室の白い壁を見つめていると、
普段は思いもしない考えが沸いてくる。


この白い壁に、
アタシの血で、
アク部長の名前を書いて、
呪ってやりたい。


笑いの神様。


白い壁に、アタシの鮮血で、
「呪・アク部長」と書き殴りたいのだけれど。


あれ?
「呪」という漢字は、どう書くのだっけ?


普段は、縁のない漢字だし。
いっつもパソコンを使っているから、
漢字は読めるけど、書けなくなっているようだ。


しつこく思い出そうとしても、
どうしても「祝」しか思い出せない。


・アク部長!!


呪いたいのに。
祝ってどうすんだよ。





ぷぷっ。
思わず、一人、笑ってしまった。


すると。
待ってましたとばかりに、笑いの神様が降りてきたようだ。


そして、有無を云わさず、
温かい両腕で、心をギュっと抱きしめてきた。


何だろう?
少し笑っただけなのに。
身体も心も、あったかい。


心に温度が戻ってくると。
ふと、我に返る。


アタシ……。
何をしているんだろう?


手首に押し当てようとしたナイフを投げ捨て、
そのまま、カーテンを開けるために立ち上がる。
柔らかい西日が、注がれる。
すると、唐突に、自分が強烈に空腹だということに気付かされる。



とにかく、何か、口にしよう。


どうやら。

笑いの神様が、アタシを助けてくれたようだ。

つづく

コメント