死の使い。
昔。
友の自宅を訪ねた時のことだ。
神奈川県のベットタウンと呼ばれるその街は、
緑も豊富で、
大小、様々な一軒家がひしめき合っていた。
そんな中、
友の家、
友の部屋の窓の真上に。
なんてこった。
カラスが2羽、
無遠慮に、鎮座しているではないか。
ああ、忌々(いまいま)しい。
漆黒の羽。
ああ、憎らしい。
青白い瞳。
どんなに払っても、すぐに舞い戻ってきちまうんだ。
カラスたちよ。
近くに大きな木だって、あるじゃないか?
もっと居心地の良さそうな屋根もあるぞ。
なのに、なぜ?
「闘病中」の友の部屋の上を選ぶんだ?
田舎のお祖母ちゃんの言葉を思い出す。
「カラスは死の使いだから、近々死ぬ人の出る家がわかるんだよ」
頼むから。
ねぇ、頼むから。
今すぐ、ここから立ち去ってよ。
友から、遠く離れてよ!
カラスは人の死がわかるの?
2週間後、
友が死んだ。
アタシが友に呼ばれて自宅を訪ねた時には、
友は、もう歩けなくなっていた。
美しい顔も肢体も、随分、痩せてしまっていたんだ。
ねぇ。
カラスは人の死を察知するの?
人間にはない感覚を持っているの?
いや、ただの偶然だよ。
そんなの迷信だよ。
だけど。
あの日。
あのカラスたちは。
追い払ってもビクともしない。
ただならぬ威圧感で、
人間にはない感覚を、アタシに見せつけてきたんだ。
カラスは賢い生き物だし。
可愛いと云う人もいるけれど。
だけど。
やっぱり。
あれから。
アタシは、カラスが大っ嫌いだ!
つづく
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